| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-264 (Poster presentation)
気候変動(地球温暖化)による影響は、種の絶滅や、生息域の移動・減少・消滅などを引き起こし、生物多様性の損失につながる可能性がある。さらに生物の絶滅リスクは、気候変動により加速度的に上昇するとも考えられている。
近年、気候変動による深刻な影響を回避するために、温室効果ガスの排出削減(気候変動の緩和策)や、気候変動によるさまざまな影響に対して、柔軟に対応する社会の構築(気候変動の適応策)といった対策を行うことが急務となっている。これらの気候変動対策はまた、土地利用政策とも相互に関連しており、このことも生物の生息域に影響を与える可能性がある。
生物への気候変動の影響には2種類あり、一つは直接的な気候変動の影響、もう一つは気候変動緩和策等による土地利用改変などの間接的な影響がある。これまでの研究は前者が中心であり、後者の影響も含めて評価した研究は少ない。
鳥類は地球上で最も幅広く研究されている種の一つで、蓄積されているデータ量が豊富であり、気候変動による生物多様性への影響を測る重要な指標となり得ると言われている。
そこで本研究では、将来の気候変動の直接的な影響や、気候変動緩和策等に伴う土地利用改変の影響が、全球スケールでの鳥類の絶滅リスクに及ぼす影響を評価することを目的とした。
まず、IUCNのレッドリストに掲載されている鳥類全11126種のうち、GBIFに登録されている在データを用いて、Maxentによる種分布モデルを構築でき(4964種)、かつ個体数データが手に入った1106種について、気候および土地利用を説明変数とする分布予測モデルを構築した。構築したモデルを、将来(2070年)の気候シナリオおよび土地利用シナリオに投影することにより、将来の潜在分布面積をRCPシナリオごと(RCP2.6とRCP8.5)に推定した。なお推定には、鳥類の移動分散能力を考慮して行った。最後に、現在から将来への潜在分布面積の変化と、個体数データを用いて、鳥類の絶滅確率を計算した。