| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-268  (Poster presentation)

環境DNAから読み解く六甲山周辺の土地利用と淡水魚類相の関係性
Environmental DNA reveals the relationships among land uses and freshwater fish fauna around Mts. Rokko

*中尾遼平(神戸大・院・発達), 平岩将良(神戸大・院・発達), 山本哲史(京大・院・理), 宮正樹(千葉県中央博), 源利文(神戸大・院・発達)
*Ryohei NAKAO(Kobe Univ.), Masayoshi K Hiraiwa(Kobe Univ.), Satoshi Yamamoto(Kyoto Univ.), Masaki Miya(Chiba museum), Toshifumi Minamoto(Kobe Univ.)

淡水生態系は限られた水域の中で非常に高い生物多様性を有している一方で、近年もっとも危機に瀕している生態系の一つである。なかでも人間活動による土地利用の改変は、都市化などによって淡水生態系の生物多様性に多大な影響を与えている。淡水生態系に属する生物群のなかでも、淡水魚類は生息範囲の制限などから淡水生態系において人間活動の影響をもっとも受けやすい分類群の一つである。本研究では六甲山周辺地域を調査地として、GISデータから得た土地利用を含む地理的要因、環境DNAメタバーコーディング手法で明らかにした河川225地点58種の淡水魚類の分布情報、生態情報から分類した魚類のグループを用いて、淡水魚類の分布と土地利用や地理的要因との関係を明らかにした。58種の淡水魚類は生活様式などから6グループに大別され、ほとんどのグループは河川周辺の水田面積と標高によって種数が増減する結果となった。これは、特に日本産淡水魚類の多くが氾濫原環境に適応した種が多いこと、氾濫原環境の代替地として水田を利用していることが理由としてあげられる。一方、水田面積の影響しなかったのはニホンウナギAnguilla japonicaなど回遊を行い、河川の中下流域に生息する種で構成されるグループであり、標高と河川次数が種数の増減に影響を与えていた。これらの種は水田のほとんどない六甲山南側の市街地でも出現しており、他のグループとは異なり海域との連続性が重要な要因となっていると考えられる。また、ほとんどのグループで標高が高くなるほど種数が減少しており、急流、低水温環境における魚種数の少なさを反映していると考えられる。本研究では、都市部と農村部の混在する六甲山周辺地域をモデルとして、淡水魚類と土地利用の関係性について環境DNAを用いた高頻度・多地点のデータから実証し、淡水魚類における水田および氾濫原環境の重要性を改めて明らかにした。


日本生態学会