| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-270 (Poster presentation)
都市は生息地の分断化や消失などの人為的撹乱を通して、生物多様性に大きな影響を及ぼす。淡水生態系は生物多様性のホットスポットであるが、人為的撹乱により最も危機に瀕した生態系の1つとなっており、対策を立てるために現状を把握する必要がある。機能的形質は、種数や個体数よりも生息地の環境を反映すると考えられる。トンボ類は分散能力が高く、生息地の変化に敏感に反応するなどの特徴をもち、淡水生態系の指標生物として利用される。そこで本研究は、機能的形質に基づき、都市における池ごと(局所スケール)のトンボ類群集の決定要因を調査した。
調査は東京都都市部(北多摩地区、南多摩地区、新宿区、杉並区、世田谷区、台東区、千代田区、目黒区)の130の池で、2018年6月~10月に実施した。池の周囲を毎分20~30 mの速さで歩き、トンボ類の種数、個体数と飛翔高度を記録した。飛翔高度は水面からの飛翔した高さと定義した。また、複数地点で確認したトンボ類の飛翔高度のうち最も高い5地点の平均値を潜在的飛翔高度(以下、PFH)と定義した。環境要因として、池の面積、底の表面の物質、岸辺の環境を6~8月に、人為的撹乱として人の侵入と排水の有無を6~10月に目視で調査した。機能的形質として、幼虫と成虫の体長、産卵方法、卵と幼虫の生育期間を図鑑に基づき区分した。
調査の結果、全130の池で30種2189個体のトンボ類を確認した。人の侵入の有無で池のトンボ類の群集構造は異なっていた。トンボ類の種数と個体数は池の面積や植物の被覆率の増加により増える一方で、人為的撹乱のある池では減少した。PFHが高く、卵と幼虫の生育期間が短く、産卵する基質を選ばない種は多くの池に分布した。これらの種は人為的撹乱を緩和・回避することで、都市の池に生息していると考えられる。