| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-275  (Poster presentation)

草本群集の多様性を介した干ばつ下における分解機能の安定性 【B】
Temporal stability on decomposition associated with the grassland community under drought stress 【B】

*岡田慶一(横浜国大 環境情報), 佐々木雄大(横浜国大 環境情報), Qingmin Pan(Chinese Academy of Sciences), 森章(横浜国大 環境情報)
*Keiichi OKADA(Yokohama National Univ.), Takehiro Sasaki(Yokohama National Univ.), Qingmin Pan(Chinese Academy of Sciences), Akira S Mori(Yokohama National Univ.)

生態系が有する安定性は、気候変動などの人為攪乱下でも自然環境を維持・保全するための根源的な要素である。その安定性を生み出すメカニズムを解明することは、将来の地球環境や人間社会を維持する上で極めて重要である。攪乱時における生態系機能の安定性や頑健性は、これまで草地における群集操作実験や自然草原を対象にして多くの研究が蓄積されてきた。特に、干ばつなど水分ストレスに対する植生応答のメタ解析から、植物の種多様性が高いほど、水分環境変動時における一次生産の安定性が高まる傾向が報告されている。一方で、干ばつ時における他の生態系機能の経時安定性と植物多様性の関係性は未だ実証に乏しい。
有機物分解機能は、一次生産された炭素やその他栄養を生態系内で循環させる重要な機能である。分解は主に微生物の生理機能によって駆動されているが、そのプロセスに植物群集は様々な経路で関与している。植物リターは分解者の栄養資源やハビタットを提供しており、その化学・物理特性は分解者群集やもたらされる機能を規定する主たる要因である。本発表では、環境操作下にある草原生態系において、植物多様性は分解機能の安定性に及ぼす影響を解析した。
調査は、中国・内モンゴル自治区シリンゴル盟のステップ草原(年平均降水量334 mm)に設置された降雨量操作試験区で行った。2014年より降雨量操作を実施しており、年降水量が500㎜から100㎜まで段階的に制御されている。同試験区において、生育期(6-9月)における土壌中の分解機能を2015年から2017年までの3年間継続して測定した。分解機能はtea-bag index (Keuskamp et al. 2013) に基づき、初期分解速度(k)と炭素貯留潜在性 (S)を求めた。これまでの蓄積データから、分解機能に対する調整降雨量の影響が継続して確認されており、降雨量操作によって生態系機能が制限されている。本発表では、降雨量制限下における3年間の分解機能およびその安定性と、草本群集組成や多様性との関係性を考察する。


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