| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-283  (Poster presentation)

カラマツ人工林における林床植生の山火事後の初期回復過程 【B】
Early  stage of the understory recovery after a  forest fire in a larch plantation 【B】

*榎木勉, 村田秀介, 南木大佑, 内海泰弘(九州大学)
*Tsutomu ENOKI, Shusuke Murata, Daisuke Nanki, Yasuhiro Utsumi(Kyushu Univ.)

ササ類が繁茂する森林ではササ類の一斉開花による枯死や山火事が更新のきっかけとなることが知られている。本研究では,2015年5月に九州大学北海道演習林内のカラマツ人工林に発生した山火事によって焼失したミヤコザサの回復過程と,林床における木本及び草本植物の更新を観察し,山火事が林床植生の動態に及ぼす影響を考察した。
 2015年7月に山火事跡地(山火事区)と隣接する非焼失地(対象区)にそれぞれ8つの10m×10mプロットを設定した。各プロットには4つの1m×1mの調査枠を設置し,枠内に生育する草本,木本種を記録した。調査は2015年,2016年,2017年の7月に実施した。各調査枠の周辺でミヤコザサの高さ,被覆率の計測ならびに刈り取りを行い,乾燥重量を測定した。
 火災発生から2ヶ月後の2015年7月のミヤコザサの被度,稈高,バイオマスはそれぞれ対象区の83%,70%,38%であった。被度はある程度回復したが,稈高は低く,葉量も少ないためバイオマスは小さかった。2016年の山火事区のミヤコザサの被度,稈高,バイオマスは対象区と有意な差がなかった。山火事区の稈高の平均値の変化から,2016年では山火事直後に発生した稈高の低い稈と1年後に発生した対象区と同程度の高さの稈が混成していたが,2017年には完全に入れ替わったことが示唆された。
 2016年に山火事区の林床に出現した木本の種数は対象区の2倍近くであったが,2017年では両区に出現した木本の種数は等しかった。一方,草本種は2016年,2017年とも山火事区では対象区の2倍以上の種が出現した。各調査枠の群集組成データからnMDSの二元配置を行うと,2016年,2017年とも山火事区と対象区の重なりは小さかったことから,山火事の影響で形成された植物群集がその後2年間は維持されていたと考えられた。


日本生態学会