| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-284 (Poster presentation)
近年、ボルネオ熱帯木材生産林の持続性を広域評価するために、様々な強度で伐採の影響を受けた熱帯林の生物多様性を広域評価する手法が開発された。この手法では、生物多様性の指標として林冠木の種組成に基づく原生林との組成距離を使用しており、原生林との組成距離が近いほど原生性が高いと評価する。ここで疑問となるのは、林冠木の種組成に基づいて原生性が高いと判断された伐採後二次林では、本当に持続的に更新できているかという点である。そこで本研究では、林冠木の種組成に基づく原生性と下層の更新パターンの関係を明らかにすることを目的とした。
調査は、マレーシア・サバ州のDeramakotおよびTangkulap保護区で行った。林冠木の原生性が異なる伐採後二次林の林分に30m×30mの調査区を計32箇所設置し、DBH10cm以上の樹木を対象にDBH(胸高直径)と樹種を記録して、林冠木の種組成を把握した。また、各調査区内に5m×5m の小径木(DBH5–10cm)・稚樹(DBH1–5cm)調査区と2m×2mの実生(DBH<1cm)調査区を5箇ずつ設置し、個体数をカウントした。なお、稚樹と実生は原生林の代表種であるShorea属を対象とした。これらのデータを用いてShorea属樹木の直径階分布を作成して歪度を算出し、更新パターンの指標として用いた。歪度の値が正の方向に大きい程、高木個体に対してより多くの稚樹・実生数が存在することを意味し、連続更新が確保される可能性を示す。調査の結果、Shorea属の歪度は、林冠木の原生性が高い林分でより高くなる傾向が示された。このことから、林冠木の種組成からみた原生性は下層の連続的に更新可能性とも関係しており、原生性の高い林分はその後も維持される可能性が高いと考えられた。