| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-285 (Poster presentation)
収益性に乏しく手入れ不足で不健全な針葉樹人工林を健全な広葉樹林に転換し、森林の多面的機能を十分に発揮させることが期待されている。しかし、広葉樹林への転換方法は確立されておらず、最適な立地環境、植栽方法及び密度など不明なことが多い。そこで本研究では、針葉樹人工林皆伐地への植栽による広葉樹林化の確立を目指し、そのための基礎知見として広葉樹植栽木の初期動態を明らかにすることを目的とした。調査は兵庫県北部及び南西部のヒノキ人工林2箇所で行った。両調査地内に一辺長を周辺ヒノキの平均樹高の1.5倍とした方形プロットをそれぞれ4箇所設置し、プロット内を皆伐した。4プロット中3プロットは、コナラ、クリ、ヤマザクラの高木性広葉樹3種を混植し、植栽密度を1000、1500、2000本/haとした。残りの1プロットはコナラを単植し、植栽密度は2000本/haとした。2013年の植栽から2018年までの5年間、植栽木(植栽時本数613本)の地際直径、光環境(植栽木上部の開空度)、水分環境(植栽木直下の土壌含水率)を毎年測定した。また植栽時のみ土壌堅密度を計測した。1年間の植栽木の生死、及び地際直径成長量を応答変数、樹種、光及び水分環境、土壌堅密度、植栽木間の競争指標、植栽方法及び密度を説明変数、調査年、プロットを変量効果とした2種類の一般化線形混合モデル(生存モデル、成長モデル)を調査地ごとに構築した。競争指標は植栽木間の距離(1-5mの5段階)及び前年直径から算出した。AICを基準に両モデルの変数選択をしたところ、最も説明力がある生存モデルには競争指標、成長モデルには光環境、樹種が両調査地とも組み込まれた。植栽後5年間において、本研究の植栽密度では植栽木間の競争が生存に及ぼす影響を無視できず、成長には光環境が重要で、同一環境下ではクリはコナラやヤマザクラに比べて成長率が高いことが示唆された。