| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-287 (Poster presentation)
北海道南西部に位置する有珠山(737 m)は、1977-78年に噴火し山頂部植生は壊滅的被害を受け、数年間は裸地状態であった。1983年に12個の2 m × 5 m調査区を山頂部に設け、現在まで植生調査を毎年行っている。1994年に調査区を5 m × 5 mに拡張した部分でも調査を行っている。被度の測定は、植生高2 mで2階層(上層、下層)に分けておこなっており、ここでは、主に小調査区の下層について述べる。生活型区分は、Tsuyuzaki (1995)に基づき、一年生草本・広葉多年生草本・禾本・低木・高木の5群に区分した。
調査期間を通じ、118種の維管束植物を記録した。蘚苔類の定着は1993年以降に認められたが、被度は7%を越える年はなかった。各年の全調査区出現種数(γ多様性)は31から72種の範囲であり、現在も増加傾向である。埋土種子起源の一年生草本が初期には認められたが、1990年以降は記録されなかった。禾本は、2000年にピークを示したが、その後は減少傾向となった。調査期間を通し多年生広葉草本が優占し、オオブキ、オオイタドリが高い出現頻度を示した。多年生広葉草本の合計被度は2005年に100%を超えたが、その後、緩やかな減少に転じている。低木は、被度合計は、最大でも5%に達せず、優占する段階はなかった。一方、木本植物は、ドロノキ・シラカンバなどの先駆種が主であり、合計被度は1991年にピークを示したが、その後減少している。主な理由は下層の葉を落とし上層へ葉層が移動したためであり、景観的には若齢林の状態に達した。
α多様性(調査区あたり種数)は、時間の経過とともに7.6から19.7まで増加し、γ多様性同様に増加傾向にある。β多様性(β1 = γ/α, β2 = γ - α)は、β1は増加傾向を示し、β2はほぼ一定であった。α多様性とγ多様性の差は変化していないが比は増加していることは、種の侵入あるいは消失は局所的に発生していることを示している。今後も、種数・多様性は増加すると予測され、局所レベルを考慮した継続調査が必要である。