| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-289 (Poster presentation)
筑波大学川上演習林においてダケカンバ林の調査を行い,その林分構造から植生遷移の中での位置づけと今後の林分動態の検討を行った。調査は鞍骨山から南西に伸びる標高1650~1760mの尾根上の北西斜面において,30m×30mのプロットを3個所設置し,Be1,Be2,Be3とした。コア採取による年輪測定の結果から,本調査地は約90~100年前に行われた人為伐採後に成立した二次林であることが分かった。3プロット共に胸高断面積合計に占めるダケカンバの割合が最も大きく,次いでミズナラが大きかった。本数密度比に占める萌芽幹の割合はミズナラで大きく,ダケカンバでは小さかった。このことから本調査地は,人為伐採が行われる以前はミズナラが優占する広葉樹林であった可能性が高いこと,人為伐採後にダケカンバは主に実生によって更新し,ミズナラは伐根からの萌芽によって更新したことが明らかとなった。一方で,3つのプロットには伐採後の林分発達段階に時間的な差が見られた。林分発達段階の最も進んだBe3プロットでは本数密度が大きく低下し,小径個体を欠いており,成熟段階に入りつつあると考えられた。Be2プロットはBe3プロットより本数密度が大きく,3つのプロットの中で最も胸高断面積合計が大きく,林分閉鎖後間もない若齢段階にあると考えられた。Be3とBe2プロットにおいては,今後本数密度が低下していく中で,ダケカンバの本数も徐々に低下し,もとのミズナラ林に戻ることが予想される。Be1プロットは3つのプロットの中で最も本数密度が大きく,ツツジ科等の低木も多いことから,若齢段階から途中攪乱相に移行したステージにあると考えられた。Be1プロットは萌芽個体も多いことから,強風による樹幹の折損によって樹冠発達が抑制されている可能性が考えられた。里山二次林においても物理的強度の小さい攪乱を高頻度に受けることで,ダケカンバ林は長期間にわたって個体群を維持してゆくと考えられる。