| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-291  (Poster presentation)

エチオピア北部のアカシア類の植栽における炭の添加効果
Effects of charcoal for the planting of Acacia in northern Ethiopia

*香山雅純(森林総合研究所), 竹中浩一(国際農林水産業研究セ), Buruh Abebe(Mekelle Univ.), Emiru Birhane(Mekelle Univ.)
*Masazumi KAYAMA(FFPRI), Koichi Takenaka(JIRCAS), Buruh Abebe(Mekelle Univ.), Emiru Birhane(Mekelle Univ.)

 アフリカ東部に位置するエチオピア国北部のティグライ州は年間降水量が570 mm前後で、短い雨季と長い乾季が特徴である。また、現地のAcacia etbaicaを主体とする植生は植被率が低く、雨季における土壌侵食も深刻であり、侵食を防止するための樹木の植栽が重要である。しかし、苗木を植栽しても、長い乾季の影響で枯死しやすいのが現状である。現地で安価に入手可能な木炭は、共生微生物の感染を促進させる効果があり、共生関係を強化することで乾季においても苗木の生存率が向上すると期待されている。そこで、本研究ではティグライ州の主要郷土樹種について炭を添加して植栽し、生存率と成長促進の向上を目指した。試験地はティグライ州、メケレ市のメケレ大学に設定した。樹種としてA. etbaicaと、エチオピアに分布するFaidherbia albidaを2017年7月に植栽した。なお、植栽にはA. etbaicaで作成した炭を1苗木あたり1 kg添加し、添加しない対照区も設定した。そして、2018年9月に苗木のサンプリングを行い、成長や養分動態を調査した。
  A. etbaicaの炭の中にはほとんど養分は含まれておらず、炭を添加しても土壌中の養分濃度は上昇しなかった。A. etbaicaの一部の苗木は動物の影響によって消失していため、炭の添加による生存率の効果は分からなかった。しかし、F. albidaの苗木は、無添加区における苗木の生存率が50%に対して、炭添加区では65%となり、炭を添加した処理区で生存した苗木が多かった。アカシアの乾重量は、A. etbaicaの葉の乾重量と、F. albidaの根の乾重量において、炭添加区で有意に重かった。サンプリング時に測定したクロロフィル濃度の指標とされるSPAD値は、A. etbaicaF. albidaの炭添加区において有意に高い値を示した。


日本生態学会