| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-299 (Poster presentation)
細分化して発展してきたマクロ生物学では、進化と生態系を結ぶ発想を歴史的に軽視してきた。しかし、生態的な現象の長期予測には、生物の適応進化と生態系機能などの生態系ネットワークとを統合して理解することが不可欠である。本研究は、アメリカから日本に約100年前に帰化したセイタカアワダチソウと18年前に侵入したセイタカアワダチソウグンバイ(セイタカアワダチソウの植食者)を対象にして、生態−進化フィードバックの観点から帰化地での植物形質の進化(変遷)と、その進化が枯葉の分解に果たす役割の解明を目的とする。そのために、アワダチソウグンバイの定着状況を考慮して日本国内の3個体群(北海道・滋賀・佐賀)とアメリカの3個体群(ミネソタ・カンサス・フロリダ)からセイタカセイタカアワダチソウを10遺伝子型ずつ採取し、京都大学生態研センター(滋賀県大津市)で野外実験を実施した。
元来の生育地においてアワダチソウグンバイが未定着、あるいは少ない北海道とミネソタの個体群は、生育地でアワダチソウグンバイが多い滋賀、佐賀およびフロリダの個体群よりも野外の共通環境下でアワダチソウグンバイに食われやすかった。さらに、北海道とミネソタ、カンサスの個体群では、他の個体群よりも枯葉のCN比とフェノール含有レベル(これらはともに植物の「食われやすさ」と「分解のしやすさ」の指標であり、値が低いほど、食われやすく分解されやすい)が低かった。さらに、枯葉の分解実験から「北海道とカンサスの個体群では、他の個体群よりも枯葉の分解速度が速い」ことも判明した。これらの結果は、帰化地の環境に局所適応した植物形質が枯葉の分解過程を左右することを意味する。一般に富栄養な土壌環境では防衛より成長を優先する植物が好まれるため、分解過程に及ぼすこの効果は、その後の植物の進化にフィードバックする可能性がある。