| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-301 (Poster presentation)
間伐や除伐により発生する残材は,病虫害の元となることから本来林内に放置すべきではないとするのが一般的である.一方で,残材を積み重ねたもの(残材堆積物)が,エゾリスによって利用されていることも確認されている.とくに,残材堆積物周辺でオニグルミ堅果を採餌する行動が頻繁に観察されている.そこで,北海道弟子屈町にある玉川大学弟子屈農場の演習林において,エゾリスによる残材堆積物の利用をより詳しく把握することを目的とし,古い残材堆積物と新たに設置した残材堆積物の利用の差異を検討するため,エゾリスによるオニグルミ食痕の有無およびセンサーカメラによる撮影を行った.その結果,エゾリスは新たに設置した残材も利用することが明らかとなり,オニグルミ母樹から近く,かつ構成する本数の多い残材堆積物周辺でオニグルミ堅果の食痕が多いことも確認された.エゾリスは採餌中の天敵による攻撃を回避するために残材堆積物を利用していると考えられる.また,エゾリス以外のほ乳動物や鳥類も残材堆積物周辺で撮影されており,生息するアリなどを採食していると思われる.したがって,腐朽が進んだ残材は人工的なものではあるが,スナッグツリーなどと同様に野生動物にとって有用なものであると結論づけられる.