| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-306 (Poster presentation)
顕花植物の約8割は送粉を動物に頼っており、これらの植物では送粉者を誘引するために花の色・形・香りなどの信号を使っている。これらの信号は、質的・量的に開花期間中常に一定であるとは限らず、開花期間や昼夜でも変化することがあることが報告されている。ゆえに、昼夜間での送粉者誘引効率に差が生じ、植物の繁殖成功度に違いが見られる可能性が考えられる。
本研究の対象種メマツヨイグサ(Oenothera biennis)は2年生草本であり、夕方から開花する一日花をつける。先行研究では、本種ならびに近縁種で花蜜中の糖度や花の香りに昼夜間差が報告されており、マツヨイグサ属植物では送粉成功度に昼夜間差があることが期待される。本研究では、メマツヨイグサの送粉者相の変化と繁殖成功度の昼夜間での違いを明らかにすることを目的として、(1)昼夜間での訪花昆虫の比較、(2)操作実験によるメマツヨイグサの種子生産量の比較、(3)生産された種子の発芽率比較を行った。
調査は7月下旬に北海道石狩市から採取した個体を、北海道大学の実験圃場に移植した人工個体群で行った。操作実験では、コントロール、除雄+昼開放、除雄+夜開放、除雄+全日解放、袋掛けの5処理をおこなった。まず、訪花昆虫は、夜間に鱗翅目2種、昼間に膜翅目3種と双翅目2種が確認され、昼夜間での訪花昆虫の違いが見られた。また、操作実験による種子形成の解析では、自殖による結実率が安定して高いこと、「昼間のみ」「夜間のみ」の送粉による結実率には違いが見られなかったことが分かった。その後の発芽実験では、自殖種子の発芽率が安定して高いことが分かった。
実験期間を通した解析から、メマツヨイグサは種子形成の多くを自殖でまかなうことができること、また他殖についての昼夜間での繁殖成功度は同程度であり、昼間の送粉者も重要であることが示唆された。発表では、繁殖成功度の昼夜間比較を季節変動とともに考察する。