| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-310 (Poster presentation)
アリは植物の重要な共生者であり、多数の系統の植物がアリに花外蜜等の報酬を提供することで共生関係を築いている。一方で送粉共生においてアリは盗蜜者とみなされることが多く、花蜜を消費するだけでなく、送粉者を排除して植物の繁殖成功に負の影響を与えることが知られている。この影響を避けるために植物は花からアリを排除する機構を保持していると考えられているが、その機構やその効果については知見が少ない。発表者らは系統的に離れたツルニンジン(キキョウ科)とコシノコバイモ(ユリ科)の2種において、花弁上をアリが歩けずに滑る様子を観察した。2種は共に露出した蜜腺から多量の蜜を分泌することから、滑る花弁は盗蜜アリの花内部への侵入を阻害する機構であると考えられる。昨年度までの研究により、花弁表面のワックス結晶が滑りやすさの要因となっていることや、人工的に橋渡しをするとアリによる盗蜜が増加することがわかっていたが、その繁殖成功への影響については明らかでなかった。本発表では盗蜜アリが繁殖成功に与える影響を検証した野外実験の結果をあわせ、これらの種における滑る花弁の生態学的意義を考察する。