| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-311 (Poster presentation)
ママコナ属は世界で約35種、日本には5種が分布している小さな属であるが、ママコナ(Melampyrum roseum)、シコクママコナ(M. laxum)についてはこれまで数多くの変種・品種が記載されており、集団ごとの花形態を含む変異が非常に大きい。これまで調査されている種では、そのほとんどでマルハナバチなどの長舌を持つハナバチ類が送受粉に関わっている。しかし、紀伊半島南部、屋久島など分布の辺縁部では、顕著に花形態の異なるママコナ属の集団が知られており、 ハナバチ以外の昆虫によって送受粉が行われていることが明らかになってきた。
本研究ではこのような集団の中から、紀伊半島の南部のシコクママコナ集団に着目した。紀伊半島南部ではシコクママコナが局所的に分布し、有効な送粉者はトラマルハナバチ1種のみである。また、紀伊半島南端部には1992年に新種として記載されたオオママコナという種が分布する。このオオママコナはこれまでの研究により、昼行性のスズメガにより送粉されることが明らかになっており、花筒が他のママコナ属より顕著に長い特異な種である。このオオママコナ、及び紀伊半島南部のシコクママコナに関して形態的な特徴を調査したところ、花形態以外では両者は区別がほとんどできないことが明らかになった。また、オオママコナを含む日本産ママコナ属全種について、葉緑体DNAの領域(trnL-trnF、trnL、atpB-rbcL、accD-psaL等)を用いて系統解析を行い、シコクママコナとの類縁性を明らかにした。これらの結果より特異な送粉様式を持つオオママコナがどの分類群から進化してきたのかを考察した。