| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-314 (Poster presentation)
日本におけるカキの栽培はおよそ1300年前からはじまり主要な果物の1つである。カキは雌雄異株植物であることから基本的に送粉昆虫が必要とされている。これまでの研究からカキの主要訪花昆虫はセイヨウミツバチと報告されている。しかしながら、多くの文献は古く、近年の訪花昆虫組成や送粉への寄与の程度は明らかではない。そこで、まず初めにカキの訪花昆虫相を明らかにし、それぞれの送粉への寄与率を明らかにした。次に調査地のカキ圃場ではカキの樹の下にはシロツメクサが優占している。調査時にカキとシロツメクサで共通昆虫が訪花していることが確認されたため、どの程度互いの植物を行き来しているかについて、昆虫体表付着花粉からの送粉ネットワークの比較を行なった。
カキ圃場において、訪花昆虫調査および訪花昆虫の体表付着花粉を同定・計数した。さらに、カキ圃場においてメッシュサイズの異なる袋掛けと人工授粉(不織布、2mmメッシュ、3.5mmメッシュ、オープン、人工授粉後に袋掛け、人工授粉後にオープンの6処理)を行ない、訪花昆虫の寄与を確認した。カキとシロツメクサの送粉ネットワークについては、カキ開花中および開花後のシロツメクサに訪花した昆虫の体表花粉を同定・計数した。
本研究の結果から、カキの主要訪花昆虫はコマルハナバチであることが明らかになった。訪花を確認したハキリバチやクマバチなどは送粉への寄与率は低かった。また、セイヨウミツバチの訪花は本調査地において観察されなかった。メッシュ袋をかけた花での結果率は20%程度、オープンや人工授粉では80%以上であった。このとこから、主要送粉昆虫は大型の昆虫(コマルハナバチ)であることを支持した。送粉ネットワークの比較では、カキの開花中はコマルハナバチやニホンミツバチなど様々な昆虫がシロツメクサに訪花していたが、開花終了後はセイヨウミツバチが優占するネットワークに変化していた。