| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-319 (Poster presentation)
鳥取砂丘では草原化・森林化が進行し、観光と砂丘植生の保全の両立が課題となっている。植生変化への哺乳類による種子散布の影響評価を目的とし、天然記念物鳥取砂丘の西側に隣接する1.15 km2の地域を対象に、2016 年12 月から2017 年12 月まで、結実種と結実期間および中大型哺乳類の糞の分布を調査し、糞中の健全種子の種類と数を記録した。また、調査地全域での約20年間の木本の分布状況の変化を明らかにするため、過去の空中写真や文献記録と2017年8月に小型無人航空機(UAV、ドローン)で撮影した画像を比較した。調査期間全体での糞塊数はイノシシ、ノウサギ、ニホンジカ、アカギツネの順で多かった。調査地では93 種の結実が観察されたが、これらの哺乳類4種の糞から確認された種子は15 種であり、哺乳類4種すべての糞から出現したのはアキグミだけだった。アキグミの種子は10月から12月に各哺乳類種の糞中から出現し、全糞中種子数に占めるアキグミ種子の割合は2016年12 月のシカ、イノシシ、キツネで98%以上、2017年10 月のイノシシとキツネで66%以上だった。アキグミの、単位体積あたりの糞中種子数はキツネで最も多く(2.6±0.4個/cm3、平均±SE、2016年12 月)、推定散布種子数は2016 年12 月にはイノシシで(107,379±5,348個/km2)、2017 年10 月にはキツネで最も多かった(22,688±4,316個/km2)。アキグミは、植林地を除く大部分が砂丘であった1997 年には調査地内で確認されなかったが、2017 年には低木と草本が混在する地帯での優占種であった。砂丘地におけるアキグミの分布拡大には中大型哺乳類による種子散布が影響している可能性が高く、鳥取砂丘における植生の保全・管理において哺乳類の動態を考慮する必要性が示唆された。