| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-327 (Poster presentation)
河川環境の質をどのような生物指標を用いて評価・把握するかについては,驚くべきことに未だに定まった方法がない(河川環境目標検討委員会編(2008)『川の環境目標を考える』)。日本では,環境省の「水生生物による水質評価マニュアル」で紹介されている平均スコア法が生物指標による評価方法の一つといえる。平均スコア法では,対象とする河川地点の瀬で底生動物を採集し,出現した科に付与されたスコアの和を出現した科数で除した平均スコアに基づき,その場の水質(主に有機汚濁の状況)や河川環境の相対的な“良さ”を評価できるとされている。しかし,算出された平均スコアが他の物理化学的要因と比較して有機汚濁に特化して明瞭な関係に示すかどうかや,その他の底生動物指標(例えば,種数)とどのような関係にあるのかについて評価した研究は私の知る限り見受けられない。後者は平均スコアの値がどのような意味を持っているかを考察する上でも重要である。
本研究では,全国の約240箇所程度の河川地点を対象として,国土交通省が実施する河川水辺の国勢調査の底生動物調査結果(河川版)と環境省が管轄する水質調査結果を統合し,(1)有機汚濁(BODを指標)やその他収集できた物理化学的要因と平均スコアとの関係,及び(2)平均スコアと底生動物の種数や個体数との関係について調査した予備的な結果を報告する。なお,各科に付与されているスコア自体は,山崎ら(1996)で報告されているように野外調査データに基づき設定されていることに留意されたい。
山崎正敏, 野崎隆夫, 藤沢明子, 小川剛(1996)<特集> 河川の生物学的水域環境評価基準の設定に関する研究--全国公害研協議会環境生物部会共同研究成果報告. 全国公害研会誌 21, 114-145.