| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-331 (Poster presentation)
近年、化学合成農薬や化学合成肥料の投入を抑えた環境保全型の農業生産方式の導入が奨励されている。こういった生産方式において安定した生産を行うには、養分供給や害虫制御を行う土着生物の機能の活用が欠かせない。ミミズは養分循環や土壌の物理性の改善を行い、肥沃度維持・改善に寄与する土着生物である。農薬はミミズの成長、生存、繁殖などに影響を及ぼす要因の1つである。農薬がミミズに影響を及ぼす程度は剤により異なるが、殺菌剤や殺虫剤は直接的に影響を及ぼし、除草剤は地表面の草を枯らすため農地の微気象環境を変えるなど間接的に影響を及ぼす。作物に使われる農薬は1つでは無く、農薬は直接的及び間接的にと複雑にミミズに影響を及ぼすことから、本研究ではまず有機栽培と減農薬栽培実践圃場においてミミズ群集の調査を行い、栽培管理がミミズ群集に及ぼす影響を評価した。ミミズ群集調査は、2015年秋から行い、2016年は夏と秋、2017年は夏に行った。夏にミミズバイオマスが有機栽培区で多くなったが、秋には両栽培で差は見られなかった。ミミズの生活型は大きく表層生息型、地中生息型、地中生息表層採餌型の3タイプに分けられる。各3タイプのバイオマス比を調べたところ両栽培とも地中生息型が数%~10%程度と低い生息密度で、ミミズ群集としては地表の有機物を主に摂食していた。本研究では直接的に物理性の変化は調査していないが、ミミズバイオマスが夏に有機栽培区で増加し秋には栽培方法で差が無かったため、ミミズにより行われる団粒形成などによる土壌物理性改善効果は春から夏にかけては減農薬栽培より有機栽培で高まると考えられた。本研究では栽培体系により夏のミミズバイオマスが異なる明らかにした。今後、そのメカニズムを解明することでミミズの機能を活用した栽培体系の構築に寄与できる。