| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-332 (Poster presentation)
土壌トビムシ群集の形成に、資源やストレス条件が、いつ重要であるのかわかっていない。もし環境ストレスが機能形質を選別しているなら、ストレスがかかる場所でストレスがかかる時期に強い形質選択が生じると考えられる。本研究ではトビムシ群集の種や機能の構造に与えるストレス、資源、時間の影響を評価するため、資源の質としての植生が変化する天然林と、変化しないスギ林双方において、物理ストレスを反映する標高傾度に対するトビムシ群集の種構成と機能形質の反応を種レベル、個体レベルで季節ごとに調べた。
九州脊梁山地の標高300, 700(暖温帯), 1100, 1600m(冷温帯)の各地点で、隣接する天然林、スギ林を一箇所ずつ選んだ。2016−2017年のいずれかの年の2,5,8,11月に、それぞれの林分で、異なる林冠木5つを選び、100ccの土壌を採取した。ツルグレン装置でトビムシを抽出し、すべての個体の種と体長を記録した。種ごとの形質には成体の体長を用いた。
トビムシは全部で121種9292個体得られた。個体数は天然林では高標高ほど減少するが、人工林では標高の影響がなかった。種特性としての成体の体長の群集加重平均は高標高ほど増加した。季節間で比較すると、どの標高でも冬、秋に大型種が選択された。実際の個体サイズは、天然林ではいずれの季節も高標高ほど増加し、特に冬のサイズ差が大きくなった。一方、人工林では、冬に他の季節より実際の個体サイズが大きくなったが、標高に対しては、秋のみ高標高ほどサイズが増加し、他の季節では標高によるサイズの変化はなかった。トビムシの体長は、ストレスの高まる時期かその前に、特にストレスの高い場所で大型個体が選択されることが明らかとなった。種の違いを除いた場合、標高と季節のみのモデルが選択され、植生の違いは選択されず、どの季節でも個体サイズは高標高ほど大きくなった。植生による個体サイズ分布パターンの違いは、選択される種の違いによるところが大きい。