| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-335  (Poster presentation)

日本産昆虫DNAバーコードライブラリ整備の現状〜種間関係の解明にどこまで迫れるか
DNA barcode reference library for the Japanese insect fauna: current trends and issues

*岸本圭子(新潟大・朱鷺自然研セ), 向井喜果(新潟大・院・自然科学), 関島恒夫(新潟大・農)
*Keiko KISHIMOTO(Niigata Univ., CTER), Haruka Mukai(Niigata Univ., Sci. Tech.), Tsuneo Sekijima(Niigata Univ., Fac. Agric.)

昨今の微量DNAを解析する技術の発展は目覚ましく、胃や消化管、糞に残された被食者DNAを増幅させDNAバーコーディングによって種間関係を明らかにしようとする試みは数年前より遙かに容易になってきた。DNAバーコーディングには、既知種のバーコードライブラリ構築を目的としたプロセスと、未知のサンプルのバーコード配列をライブラリデータと照合することによって同定を行うプロセスとがある。種間関係の解明は後者のプロセスを経て行われるが、その精度は前者で構築されたバーコードライブラリの充実度によって左右される。研究の目的によって、暫定的な操作単位で十分な場合がある一方で、精度の高い種レベルの同定が必要な場合もある。本研究は、新潟県佐渡島で放鳥されたトキの糞に残された被食者DNAのバーコード領域(COI 157bp領域)を使った食性解析において、主要な餌生物である昆虫群の同定の精度を検証する。これまで、放鳥トキの糞約500サンプルから得られた被食者群の塩基配列をBLAST検索し、データベース中でもっとも類似性が高い分類群への絞り込みを行った結果、昆虫綱108OTUは暫定的に目レベル(0.9%)、科・亜科レベル(11.1%)、属レベル(33.3%)、種レベル(54.6%)まで推定された。この中には現状のレベルの同定では詳細な生態情報が不明のままでより下位のレベルまで同定が必要な餌生物群が含まれることがわかった。一方、種レベルまで落とし込まれたOTUでも佐渡で生息が確認されていないものも比較的多く含まれており、一部の分類群では生息実態やDNAバーコードの情報不足が考えられた。効率的な餌場整備や順応的管理に向けた昆虫群のバーコードライブラリ整備について議論する。


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