| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-336 (Poster presentation)
近年、里山景観は社会生態学的生産ランドスケープ(SEPLS)と類似するものとして再認識されつつあり、スギ人工林は当該景観の代表的要素として日本中に広く分布している。国内のスギ人工林は、それ以前にも継続的に利用されていた二次林が大規模に一斉に攪乱された場所に形成され、その後もインフラ整備などの開発によって大規模・小規模に分断化されてきた。さらに近年は人口減少に伴って継続的な利用や管理の頻度・割合が減少してきている。このように、地域規模での一斉改変と、局所レベルの改変に繰り返し曝されてきた環境下において、人による利用と生物群集自身の内的要因が現在の群集構造に対してどのように影響するのかを解明し、群集構造の変化を予測するため、オサムシ科昆虫群集の調査・解析を行なった。
調査地は、長野県白馬村の典型的な里山景観の河岸段丘上に位置するスギ林帯に設定し、ピットフォールトラップでオサムシ科昆虫を採集した。2007年から2012年の6年間、居住地区に隣接した林分において調査を行なったところ、本研究の空間スケールにおいては、年変動よりも地点間で群集構造の差異が大きかったが、地点間の距離と群集の類似性との関連は小さかった。そこで、居住地区に隣接した林分4地点(標高750~800m)において7月(2009年、2010年)と8月(2009年、2012年)に、スギ林帯の標高勾配に沿った5地点では2008年の8月にそれぞれ調査を行ない、標高による環境勾配と低標高地域の水平方向の環境変異に応じた群集構造について解析を行なったところ、スギ林帯の全体では種特異的な空間分布パターンを示していたが、局所群集間では種内でも季節や地点ごとに異なる空間分布パターン・行動を示していたため、これらを説明する要素を抽出し、時系列で変異する要素との関連性について考察した。