| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-337  (Poster presentation)

マダガスカルの乾燥林に棲むヘビはニッチを分割しているのか?
Do snakes in a Madagascan dry forest partition their niche?

*児島庸介(東邦大学), 森哲(京都大学)
*Yosuke Kojima(Toho Univ.), Akira Mori(Kyoto Univ.)

ヘビ類はしばしば数多くの種(最大で80種以上)が同所的に共存する。このような多種共存は、一部のヘビ群集においては、餌の食い分けによって可能になっていると考えられている。しかし、ヘビ類の群集構造は地域変異が大きく、種間で食性が大きく重複する場合も多い。また、特に多くの種が分布する熱帯域のヘビ類については、食性の定量的なデータが得られていないことがほとんどである。そのため、ヘビ類の多種共存における食い分けの重要性については議論が続いている。
本研究ではヘビ類が比較的高密度で棲息し、20種が共存するマダガスカル島北西部の乾燥林において、種間での食い分けの有無を検証した。解析には17年間の野外調査で収集された食性データを用い、Null Model解析によって、食性の重複の程度(Piankaの指数)の実測値と、データをランダムに改変した場合に得られる分布とを比較した。その結果、食性の重複の実測値はランダムよりも有意に大きいことが示された。これは、食性ニッチが分割されていないことを表している。この結果は、多くの種がトカゲ類やカエル類を餌としており、逆に鳥類を餌とする種は少ないことなどに起因しているのかもしれない。ただし、今回のNull Model解析では、各餌動物の豊富さやサイズなどは考慮されていない。実際、調査地のヘビ類の体サイズには大きな種間変異がみられたことから、餌の(種類ではなく)サイズに応じた食い分けをしている可能性も考えられる。本地域のヘビ群集における種間競争や食い分けの重要性を理解するには、今後より詳細な解析が必要である。


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