一般講演(ポスター発表) P2-338 (Poster presentation)
機能的多様性の空間変異パターン:荒尾干潟の底生生物群集を事例に
Pattern of spatial variation in functional diversity: a case of benthic macrofaunal communities at Arao tidal-flat in Kyushu, Japan
*山田勝雅(熊本大学・水循環セ), 逸見泰久(熊本大学・水循環セ), 鈴木孝男(みちのくベントス研), 吉野健児(国水研), 森敬介(ひのくにベントス研), 石田惣(大阪市立自然史博物館), 竹下文雄(熊本大学・水循環セ), 前川匠(熊本大学・水循環セ), 多留聖典(東邦大学), 渡部哲也(西宮市貝類館), 田中正敦(鹿児島大学), 松浦弘(熊本県立岱志高等学校), 比留間美帆(日本国際湿地保全連合), 青木美鈴(日本国際湿地保全連合), 小材隆文(熊本大学), 山北剛久(JAMSTEC)
*Katsumasa Yamada(Kumamoto Univ. CWMD), Yasuhisa Henmi(Kumamoto Univ. CWMD), Takao Suzuki(Michinoku Benthos), Kenji Yoshino(NIMD), Keisuke Mori(Hinokuni Benthos), So Ishida(Osaka MNH), Fumio Takeshita(Kumamoto Univ. CWMD), Takumi Maekawa(Kumamoto Univ. CWMD), Masanori Taru(Toho Univ.), Tetsuya Watanabe(Nishinomiya SM), Masaatsu Tanaka(Kagoshima Univ.), Hiroshi Matsuura(Kumamoto Pref. Taishi HS), Miho Hiruma(WIJ), Misuzu Aoki(WIJ), Takafumi Kozai(Kuamoto Univ.), Takehisa Yamakita(JAMSTEC)
種の機能や形質を特徴づけることで得られる「機能的多様性」は,群集を「生態系に果たす役割(機能)の集合」として捉える概念であり,この指標を用いることで,集合規則の一般理論に新たな観点をもたらすことが期待される.また,群集の将来予測,生態系機能や価値の指標化,保全対象種の選定など,様々な応用的な展開にも注目が集まっている.しかし,陸上生態系(植物)を対象に盛んに研究事例が報告される反面,水圏(特に海洋)生態系を対象にした研究では実例が乏しい.水圏生態系を対象に「機能的多様性」を用いた研究事例を示すとともに,得られた結果を陸上生態系と比較することで,本指標の有効性を再検討・再確認すべきだろう.
本研究は,沿岸干潟生態系の底生生物(ベントス)群集を対象に,その機能的多様性の空間変異パターンを評価することを目的とした.有明海において1600ha以上の面積を誇る広大な荒尾干潟の全域を対象に,約250定点において出現種を半定量的に評価し,出現した各種の形質と機能から,ベントス群集の機能的多様性(FRic)を算出した.機能的多様性は一様に空間配置されるのではなく,空間局所的に高い値を示し,一部は空間自己相関を有すソース型のパターンを示した.しかし,その空間配置は高いランダム性を有すことが示唆された.荒尾干潟のような広大な干潟においては物理的環境の影響は,空間に対してほぼ均質に与えられていると考えられることから,空間的に不均質な機能的多様性は主に生物間相互作用によってもたらされていることが示唆された.