| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-339 (Poster presentation)
種分化や絶滅は地球規模の種多様性パターンにどのような影響をあたえるのか?特定の地域や分類群の研究では、適応放散や大規模な絶滅が群集構造に強く影響することが示されているが、その普遍的なメカニズムは明らかになっていない。海洋島には固有種や絶滅種が多く存在することが知られているため、全球の島群集で網羅的な解析を行なうことで、これらの歴史的プロセスの影響を詳しく調べることができると考えた。本研究では、特に島での種分化や絶滅の例が多い鳥類に注目して、種分化と絶滅によって群集の系統構造がどのように変化するのかを解析した。鳥類全体の過去と現在の分布データから、全球の島それぞれで固有種と絶滅種を特定し、種分化前と絶滅前の群集を推定した。種分化前の群集として現存種から固有種を除いたものを使用し、絶滅前の群集として現存種に絶滅種を追加したものをもちいた。種分化前および絶滅前の群集と現在の群集の系統構造の差を定量し、構造の変化度合いと島の環境との関係を重回帰モデルによって評価した。解析の結果、全体的に島群集は種分化後により近縁種で構成されるように変化したことがわかった。特に温暖で安定した気候の島や孤立度が高い島で変化度合いが大きかったことから、このような島で種分化が促進されることが群集構造を決定する重要な要因であることが示された。一方で、絶滅による変化は島によってさまざまであった。ハワイ諸島などでは絶滅後に遠縁種で構成されるよう変化していたが、モーリシャス島などでは近縁種で構成されるように変化していたことから、絶滅の要因によって群集の変化の仕方が異なることが示唆された。本研究によって、種分化と絶滅が全球の島の鳥類群集の系統構造を変化させることが初めて示され、環境と関連した歴史的プロセスが現在の群集構造の決定に重要であることがわかった。