| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-340 (Poster presentation)
砂礫河原とは、礫床河川特有の環境であり河川で一定規模の攪乱が起こることにより植生の発達が抑制され維持されてきた。このような事象が長期的に続いてきた特殊な環境には、そこに適応した種が生息をしている。しかし近年、治水工事により河川の氾濫は抑えられ、安定化した環境では植生の遷移が進み、砂礫河原で樹林化が進んでいる。そのため植生が疎らな砂礫河原が消滅し、砂礫性生物が絶滅に追い込まれている。琵琶湖流入河川においても、砂礫性生物が生息する環境は、ごく少数の河川に限られている。その一つである滋賀県東部を流れる愛知川は天井川のため、河川改修や圃場整備などの影響により水位が下がり、夏には扇状地域を中心に大規模な瀬切れが発生している。しかし、愛知川では樹林化が進んでおらず砂礫河原が中心となっており、砂礫性生物であるカワラバッタも生息している。砂礫河原において植物相や特定の昆虫を扱った研究はあるが、砂礫河原の昆虫相について研究したものはほとんどない。そこで本調査は、滋賀県愛知川の砂礫河原に生息する昆虫相(直・鱗・鞘翅目)の把握を目的とした。
調査は愛知川上流から下流にかけて4地点の調査地を設定し、4月末から11月末までに7回行なった。調査の結果、直翅目が種数と個体数が共に最も多かった。2018年は台風などが多かったためか砂礫河原での植生の増加は確認できず、また開花植物が非常に少なく、訪花性昆虫がほとんど確認できなかった。一方で、全調査地でカワラバッタやカワラヨモギなど砂礫性生物を確認したことから、愛知川では水位低下による瀬切れが問題となっているが、河川の氾濫や土砂流入などにより砂礫河原が保たれているといえる。しかし、瀬切れし河床が表面に現れた状態でも河床にはカワラバッタなどの進出は見られなかったことから瀬切れのみによる砂礫の堆積状態ではカワラバッタなどの生息範囲は拡大しにくいと考えた。