| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-357  (Poster presentation)

大阪湾における底生動物のモニタリング調査
Monitoring of megalobenthos in Osaka Bay

*安岡法子, 木村祐貴, 山中智之, 大美博昭, 佐野雅基(大阪環農水研)
*Noriko YASUOKA, Yuki Kimura, Tomoyuki Yamanaka, Hiroaki Omi, Masaki Sano(RIEAF, Osaka)

底生動物は魚類などの高次捕食者の餌資源として重要であり,移動能力に乏しいため海底環境の指標としての利用が期待できる。しかし,一部の種を除いて,分布と環境要因の関係が明らかになっているものは少ない。そこで本研究では,大阪湾全域において小型の底生動物の分布状況と環境要因の関係について明らかにすることを目的とした。
調査は大阪湾全域の20地点において,2014年から2017年にかけて年に4回(2,5,8,11月)小型底びき網の一種である石桁網による生物採集調査を行った。漁網から抜け出る小型のサイズの生物まで採捕するため,漁業者が通常用いる漁網に目合5 mmのカバーネットをかぶせた。曳網時間は1回10分間とし,曳網距離はGPSを用いて測定した。採集した生物はすべて実験室に持ち帰り,種同定と個体数の計数を行った。各地点の環境要因としては,底泥の酸揮発性硫化物(AVS)と底層溶存酸素飽和度(DO)を測定した。
 甲殻類であるヒメガザミやフタホシイシガニは,採集年月ごとに個体数の増減はあるものの,大阪湾でほぼ周年多く見られた。一般化線形モデルによる解析を行った結果,個体数にはAVSとDOの両方が影響し,AVSが低くてDOの高い地点で多く出現した。一方で,軟体動物であるキセワタガイは,個体数の季節変動が激しく,出現個体数は5月に著しく増加し,11月に著しく減少した。AVSは個体数に影響したが,DOの影響は検出されず,DOの低い地点でも出現した。したがって,底生動物の個体数に影響する環境要因は種によっても異なることが示唆された。小型の底生動物の動態は,それらを捕食する魚類などの高次捕食者の分布にも影響していると考えられる。今後,大阪湾の生態系への理解を深めるためには,多様な底生動物の個体数や分布に影響する環境要因をさらに明らかにしていくことが必要である。


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