| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-365 (Poster presentation)
オオサンショウウオ(Andrias japonicus)は世界最大級の両生類であり、国の特別天然記念物にも指定されている。本種の名前の由来には諸説あるが、漢字で「大山椒魚」と書かれることから、一説には植物の山椒の香りがすることに由来するとも言われている。実際に、オオサンショウウオを捕まえるなどして刺激を与えると、皮膚から特有の強いにおいを有する白い粘液(皮膚分泌物)を出す。しかし、多くの観察者がこの特有のにおいと山椒の香りとが似ていると感じることは少ないようであり、この説に対して一部で疑問が生じていた。
本研究では、このオオサンショウウオの出す分泌物のにおいと山椒の香りを化学的に分析することで両者の類似性について検討した。においを捕集する方法として、揮発性成分の定性分析に用いられる固層マクロ抽出法(SPME法)を採用した。まずオオサンショウウオの白い粘液が付着したろ紙または山椒(生葉、乾燥粉末)を専用のガラス瓶に入れ、瓶内に揮発している成分をSPMEファイバーに吸着させた。そのファイバーをガスクロマトグラフィー質量分析計(GC-MS)により測定し、得られた結果を過去のデータベースと照合するなどして解析を行った。
結果、オオサンショウウオの白い粘液のにおいと植物の山椒の主な揮発性成分には明らかな違いが確認され、両者の類似性は確認できなかった。さらに、このような特有の強いにおいがもつ生態的な意義を考察するため、本種の幼体、ヌシ(繁殖巣穴を占有する強い雄)、メス、チュウゴクオオサンショウウオおよびチュウゴクオオサンショウウオとの交雑個体といったタイプの違う個体の粘液についても比較分析を進めており、その結果についても報告する。