| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-368 (Poster presentation)
両生類幼生の幼生期間と変態サイズは適応度に関わる重要な要素であり、高い可塑性を持つ。この可塑性がもつ意義は、これまで一時的な水体を中心に研究がなされ、乾燥による水場の消失に対応するためと考えられてきた。一方、渓流は永続的な水体であるため、そこに生息する種の表現型の可塑性は、独特の進化を遂げている可能性がある。本研究は、渓流に生息する両生類幼生が示す表現型の可塑性が、どのような変態戦略に基づいて進化したのか理解するため、成長速度の低下に対する変態形質の反応の相違を、越冬の有無で説明することを目的とした。渓流性の幼生のうち、成長速度が遅い場合幼生期間が長くなるのは越冬を行う種であり、幼生期間が短くなり、小さいサイズで変態するのは越冬を行わない種であることを仮説とした。幼生が渓流性である種のうち、越冬を行う種であるツチガエル、オットンガエル、越冬を行わない種であるアマミハナサキガエル、タゴガエル、カジカガエル、の計5種について、食物条件を6-8段階に操作して成長速度を変化させ、インキュベータ内の個別飼育によって、体重の変化と変態までの日数および変態サイズを記録した。その結果、オットンガエルとカジカガエルにおいては幼生期間と変態サイズに負の関係がみられた一方、他3種では正の関係がみられ、幼生期間と変態サイズの関係は越冬の有無と関係があるとは言えなかった。観察された幼生期間と変態サイズの関係、および体重の時系列変化から、成長曲線モデルを各種について作成し、パラメータの推定値から、越冬の有無を含む各種の生態的特性と変態戦略の関係を考察する。