| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-370 (Poster presentation)
動物の糞を用いたDNAメタバーコーディングによる食性解析は、野生動物の食性を非侵襲的かつ正確に把握する方法として注目されている。しかし、野外環境に由来する餌以外のDNAが糞サンプルにどの程度混入しているかについて、操作実験による検証はほとんど行われていなかった。食物以外のDNAの混入状況を把握することは、本手法の信頼性を評価する上で非常に重要である。そこで本研究では、特定の植物を食べさせた水鳥の糞を野外に一定時間放置し、葉緑体trnL領域のDNAメタバーコーディングを行うことで、野外環境に由来するDNAの混入状況を評価した。糞を放置する地面の環境を、石の上、植物の上、湿った土の上の3通り、サンプル上部の環境を植物が覆っているか否かの2通りに分類した。混入由来のDNA塩基配列は、サンプルの総配列数に対して平均1.8%であった。混入由来の配列割合について、サンプルを放置した環境ごとに有意な差は見られなかったが、サンプル上部が植物で覆われない環境でやや高い傾向にあった。また、サンプルの放置時間と共に混入由来の配列割合が増加した。特に、放置開始から6時間以内の比較的短時間の間に混入由来の配列が増加する傾向が見られた。また、湿った土の上に置かれたサンプルでは、混入が生じる確率が他の環境よりも高くなった。これらのことから、野外環境から糞サンプルへのDNAの混入を防ぐためには、動物が糞を排泄後早急にサンプルの採取をすること、湿った土の上に落ちているサンプルの採取は避けることが重要であると考えられた。また各サンプルについて、混入由来の各OTUの出現頻度は総じて低いことから、稀なOTUを除去することで、食性データの正確性が向上すると考えられた。