| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-374 (Poster presentation)
イモゾウムシEuscepes postfasciatusの雄は交尾の際に、精子とともに再交尾抑制物質を交尾相手に送り込むことで、性的不応期を導き、雌の再交尾を抑制していることが明らかとなった(Himuro et al. 2017)。また、昨年の生態学会講演において、幼虫期の餌(サツマイモ粉末含有人工飼料、また生サツマイモ)によって、雌が再交尾に至るまでの期間が有意に異なることを示し、雌の再交尾に対する受容性、および雄の射精物が幼虫期の餌によって質的、または量的に変化することが明らかとなった。そこで、サツマイモが雌雄の繁殖形質に与える影響を調べるために、サツマイモ粉末の量を0g,10g,25g,50gと調節した人工飼料を作成した。各人工飼料入りシャーレに、イモゾウ卵を滴下、16L8D、約25℃の条件の下、7週間飼育した。その後、羽化した成虫を回収し、雌雄別々に約1週間飼育し、性成熟させた。その後、雌雄の体サイズ、受精嚢などの大きさ、雄貯精嚢内の精子数を測定し、幼虫期の餌に含まれるサツマイモの量が雌雄の形質に影響するかを調べた。また、それぞれの処理区から得られた雄を、生サツマイモで育てられた雌と交尾させ、輸送精子数を調べた。その結果、受精嚢などの大きさ、輸送精子数において、処理区間で有意な差は見られなかったが、貯精嚢内の精子数は、イモ粉末0gに比べ25g、50gの場合に、有意に多かった。また、雌雄ともに体サイズがイモ粉末0gに比べ50gの場合に、有意に大きかった。以上の結果から、幼虫期の餌に含まれるサツマイモの量は、雌雄体サイズや雄貯精嚢内の精子量に影響を及ぼすことが明らかとなった。これらの結果を生サツマイモで飼育された雌雄と比較し、雌の再交尾に対する受容性、および雄の射精物に対する幼虫期の餌の影響について議論する。