| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-379  (Poster presentation)

エゾボラの産卵:「托卵」と他の場所での産卵は何が違うのか?
Breeding of neptune whelk: are there any differences between breeding sites?

*和田哲(北海道大学), 芳賀恒介(えりも町)
*Satoshi WADA(Hokkaido University), Kousuke HAGA(Erimo-cho)

エゾボラNeptunea polycostataは、マツブという通称でも知られている北海道水産業における代表的な巻貝である。本種では、メスが、水槽の床や壁面以外に、同種他個体の貝殻表面にも産卵することが確認されている(以下では托卵とよぶ)。托卵開始から終了までに要した時間は、2ヶ月以上に及ぶものが多く、そして托卵される相手個体は托卵に抵抗していると思われる行動を示す。さらに、他のメスが貝殻に取り付こうとした際に、托卵中のメスが他のメスを払い落とす行動も観察されている。これらの観察結果から、演者らは、托卵は他の場所での産卵に比べてコストがかかるが、それでも一部の個体があえて托卵することを選んでいると考えた。そこで今回は、2016-17年及び2017-18年のデータを用いて、どんな個体が、いつ、どこに、どれくらい産卵するのかを調べることによって、托卵と他の場所での産卵の違いを見出そうと試みた。2016-17年のデータを解析した結果、托卵した個体と他の場所に産んだ個体間で体重に有意差はなく、産卵日にも有意差は見られなかった。一方、2016-17年よりも2017-18年のほうが産卵した個体数が多く、卵塊が大きかったが、托卵した個体の割合は低かった。 2016-17年と2017-18年の違いの理由には、飼育条件(餌メニュー)が改善された点が挙げられる。飼育条件の改善が、托卵する相手の活動性を高めて、その結果として托卵を困難にしたのかもしれない。


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