| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-389 (Poster presentation)
有機物の分解研究、特に定量的な研究、また枯死木を対象とした研究において、分解者生物のバイオマスは軽視されてきた。しかし、環境要因よりも真菌の占有率の方が分解速度のバリエーションを説明できるという報告があり、有機物の分解モデルにおける微生物バイオマスの組み込みが重要になると思われる。また、樹木の材部分は窒素含量が低く、CN比が数百から千程度と非常に高い。微生物のCN比は8から10程度と言われており、窒素を不動化してバイオマスを増やすことで、枯死木の分解が進行すると考えられる。そこで本研究では、窒素濃度、微生物バイオマス、分解呼吸速度に着目し、これらの要因間の関係を明らかにすることを目的とした。分解実験には、コナラ(直径約9cm、長さ90cm)を用い、自然状態で分解させたものとシイタケを植菌したものを用意した。分解実験は日本大学藤沢演習林内樹木園で行った。自然状態で分解させたものについては、土壌の窒素含量を変化させた実験区を設け、分解開始(2018年5月)と終了時(2018年10月)に呼吸速度測定後、木粉をサンプリングした。シイタケを植菌したものについては、2018年10月に1本当たり5箇所における呼吸測定の後、測定箇所から木粉をサンプリングした。クロロホルム燻蒸抽出法を用いて木粉中の微生物バイオマスを推定し、炭素窒素分析器を用いて窒素濃度を測定した。これらの枯死木の分解呼吸速度や窒素含量、微生物バイオマスの枯死木内でのばらつきや要因間の関係を明らかにした。枯死木内でのバイオマスや呼吸速度のばらつきは大きいが、枯死木間での差の方が有意に大きく、測定点よりも枯死木ごとの平均値を用いた方が相関が高かった。土壌の窒素条件は枯死木の窒素濃度にも影響を与え、窒素含量と微生物バイオマスとの間には正の相関が見られた。呼吸速度と微生物バイオマスとの関係は明瞭ではなく、子実体の発生といった成長段階の違いによる影響が大きかった。