| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-390  (Poster presentation)

冷温帯落葉広葉樹林において樹幹流が土壌圏の炭素動態と微生物群集に及ぼす影響
Effect of stemflow on soil carbon dynamics and microbial community in a cool-temperate deciduous forest

*吉竹晋平, 陳思宇, 大塚俊之(岐阜大・流圏セ)
*Shinpei YOSHITAKE, Siyu CHEN, Toshiyuki OHTSUKA(RBRC, Gifu Univ.)

樹幹流や林内雨に含まれる形で土壌に供給される溶存有機炭素(DOC)が森林生態系の炭素循環にどのような役割を果たすのかはよく分かっていない。特に樹幹流は比較的高濃度のDOCを含む水が樹木の基部周辺の土壌に長期に渡って供給されるものであり、土壌圏炭素動態や微生物群集に大きな影響を及ぼしている可能性がある。本研究では、冷温帯落葉広葉樹林を対象に室内添加実験と野外試料の分析を行い、樹幹流が土壌微生物群集の量や質にどのような影響を及ぼすのかを明らかにすることを目的とした。

 本研究は岐阜県高山市の高山サイトで行った。2017年9月に、サイト内で立木が疎な場所から採取した土壌を充填した土壌コアに、同じく野外から採取した樹幹流液を一定量添加し、微生物呼吸速度の経時変化を調べた。また、リン脂質脂肪酸分析法を用いて微生物バイオマスと群集構造の変化を調べた。同年11月にサイトの北西斜面上のミズナラ、ダケカンバ、ウラジロモミを各3個体ずつ選定し、樹幹流の影響を受ける場所として各樹木の基部の斜面下側近傍より土壌を採取した。一方、樹幹流の影響が小さい場所として、樹木基部より斜面上側かつどの樹木の基部からも十分離れた場所より土壌を採取した。これらの土壌に対して、微生物呼吸速度の測定やリン脂質脂肪酸分析を行った。

 樹幹流液を人為的に添加した土壌では微生物呼吸速度がわずかに増加した。また、微生物バイオマスは大きく変化しなかったが、群集構造には有意な変化が認められた。一方、野外試料の分析では、樹幹流を受けていない土壌に比べ、ミズナラの樹幹流を受けている土壌では無機態窒素濃度や微生物呼吸速度、微生物バイオマスが小さかった。以上の結果より、樹幹流が土壌微生物群集に及ぼす影響は短期的なものと長期的なものとで異なる可能性が示された。


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