| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-395  (Poster presentation)

ボルネオの熱帯雨林においてスキャナー法で可視化した細根と粗根動態のパターンと相違
Difference and pattern of fine and coarse root dynamics visualized by optical scanner method in Bornean tropical rainforest

*遠藤いず貴(兵庫県立大学), 久米朋宣(九州大学), Lip Khoon Kho(Malaysian Palm Oil Board), 片山歩美(九州大学), 牧田直樹(信州大学), 池野英利(兵庫県立大学), 大橋瑞江(兵庫県立大学)
*Izuki ENDO(University of Hyogo), Tomonori Kume(Kyushu University), Lip Khoon Kho(Malaysian Palm Oil Board), Ayumi Katayama(Kyushu University), Naoki Makita(Shinshu University), Hidetoshi Ikeno(University of Hyogo), Mizue Ohashi(University of Hyogo)

熱帯地域における根のフェノロジーパターンはデータ量の少なさから理解が進んでいない。大きなサイズの画像が得られるスキャナー法は、根系システムスケールで根の動態を追うことができる手法として有用である。本研究ではスキャナー法を用いて、熱帯雨林における地下部の根の生産と分解の1)空間分布、2)時間変動パターン、3)直径別の違いを検討した。
スキャナー画像の取得は、マレーシア、サラワク州のランビルヒルズ国立公園内の5か所において、2014年4月から2015年5月の間に2-4週に一度行った。生産および分解された根は、ソフトウェア(Fiji, GIMP)を用いて画像から手動で抽出し、投影面積を求めた。また、抽出した根はソフトウェア(WinRHIZO)を用いて直径0.5mm毎に分け、それぞれの直径別の投影面積を求めた。
画像内で根の生産および分解が起こる空間的なばらつきは、画像を取得した場所によって異なった。月ごとの根の投影面積から、根の生産と分解のピークの回数やタイミングといった時間変動パターンは、画像を取得した場所により異なったが、いくつかの場所で2015年2月に共通したピークが認められた。画像取得期間中の気象データから、2015年1月に降水量が他の月よりも多く、このことが影響した可能性がある。また、根の生産および分解の投影面積のほとんどは直径0.5mm以下の微細根が占めていたが、いくつかの根の生産のピークは直径0.5-2mmの根が影響していた。
根の動態の空間分布やフェノロジーパターンの違いは、ボルネオの熱帯雨林の高い多様性と不明瞭な季節性に起因する可能性がある。


日本生態学会