| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-397 (Poster presentation)
近年、日本国内で分布面積を拡げているモウソウチクは、ケイ酸集積植物として知られる。ケイ素は主に葉などに沈積し、植物ケイ酸体を形成する。これは、非晶質含水ケイ酸を主成分とする、様々な粒径をもった生体鉱物である。このため、植物ケイ酸体は、植物遺体の分解を通して土壌中に放出されると、土壌の物理性や化学性に影響を与える可能性が考えられる。本研究では、モウソウチク由来の植物ケイ酸体が土壌理化学性に与える影響についての基礎的知見を得ることを目的とし、葉リター・稈・細根の分解速度、および分解初期にみられる植物ケイ酸体の粒径を調査した。
タケの分解試験は、森林総合研究所関西支所構内のモウソウチク林で行った。同竹林から葉リター、稈(1 cm角チップ)、細根を採取してリターバッグを作成し、2017年7月に、リター層の上に設置した。また、細根試料の一部は表層土壌に埋設した。1年間の培養期間を通して、一定期間ごとに回収し重量残存率を求めた。また、分解開始時の試料を湿式分解し、0.45 µmメンブレンフィルターで吸引ろ過後、残渣を105℃12時間乾燥させることで植物ケイ酸体の全量を得た。それらをストークス則に基づく沈定法により5 µm未満、5~10 µmおよび10 µm以上の粒径に分画し、それぞれの重量割合を求めた。得られた植物ケイ酸体の一部を光学顕微鏡を用いて観察した。
本結果として、試験開始から1年後における各器官の分解速度は、リター層の上に設置した稈で最も遅く、地中に埋設した細根で最も速かった。このことから、地中における細根の植物ケイ酸体は比較的早期に土壌に供給される可能性が示唆された。また、植物ケイ酸体の各粒径画分の割合は器官によって異なり、10 µm以上の植物ケイ酸体は、稈(18%)や細根(18%)に比べ、葉リター(37%)で多かった。このことから、葉リターは他の器官に比べより多くの粒径の大きい植物ケイ酸体を土壌に供給する可能性が示唆された。