| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-400 (Poster presentation)
太陽光励起クロロフィル蛍光(Solar-Induced chlorophyll Fluorescence, SIF)は太陽光を吸収して励起した葉のクロロフィルが基底状態に戻るときに発する光であり、温室効果ガス観測衛星GOSATの観測したスペクトルデータから全球スケールでのSIFが算出できる。2011年にGOSATでSIFが観測できることが報告されて以来、そのグローバルスケールでの光合成活性や総一次生産との相関性の高さが注目され、新たな植物指標として炭素循環の解析やモデルとの連携に関する研究へ盛んに利用されている。2018年にはGOSATの2号機の打ち上げが成功し、今後SIFデータの公式プロダクトとしての公開が予定されている。本発表では、陸域生態系モデルでSIFを計算するためのモデル改良について紹介する。本改良では陸域生態系モデルVISITに光合成、熱放散、非光学的クエンチング、蛍光へのエネルギー配分に関する生化学プロセスに組み込み、SIFの計算を行ったVISITの時間分解能は1時間であり、GOSATのSIFと比較するためにGOSATの観測時間(13時頃)に合わせて12~13時のデータを抽出してGOSATとの比較用のデータセットを作成した。ここでの計算は陽葉のSIFを用い、陰葉のSIFについては、群落での放射伝達計算が可能なSCOPEモデルを用いて、陽葉に対するSIFの割合を計算することで求めた。またVISITで計算したSIFを衛星の観測方向のSIFに返還するために同様にSCOPEで放射伝達計算を行った。単一の植生パラメータで放射伝達計算を行った試験では、熱帯域のSIFが衛星観測SIFに比べて過小評価であった。その他の植生では概ね放射伝達計算を適用することでGOSATの観測したSIFの再現性が高かった。本発表では、植生ごとの放射伝達計算と植物生理パラメータ調整に関しても紹介する。