| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-402 (Poster presentation)
森林土壌の窒素無機化特性は大きな空間的変動を示し、その主な決定要因の一つは土壌有機物中の窒素(有機態窒素)量である。有機態窒素のうち、粒子状有機物(POM)は鉱物粒子と結合しておらず、POMに含まれる窒素は微生物が利用しやすく、シルトや粘土粒子と結合した鉱物有機物複合体(MAOM)に含まれる窒素は物理的隔離や化学的吸着による安定化作用により微生物が利用しにくいとされる。しかしながら、森林土壌の有機態窒素存在形態に関する情報は少なく、窒素無機化特性が示す空間的変動との関係も不明である。そこで本研究では国内の森林表層土壌における有機態窒素の分解性を粒径分画により評価し、窒素無機化特性の変動との関係を明らかにすることを目的とした。
北海道から沖縄まで日本全国の19カ所で植生が異なる1~2林分を選び、合計28林分から鉱質土層表層(0-10cm)を採取した。53μm以上をPOMと砂粒子、53μm未満をMAOMとみなして粒径分画した結果、POM-Nの平均値と変動係数は1.02g-N/kg soilおよび76.6%、MAOM-Nでは4.43g-N/kg soilおよび51.5%、POM-C/Nでは18.2および28.8%、MAOM-C/Nでは13.8および21.9%であり、大きな空間的変動を示した。重回帰分析により、POM-Nが多いと純窒素無機化速度・純硝化速度が高く、POM-C/NまたはMAOM-C/Nが高いと純窒素無機化速度・純硝化速度が低くなることが分かった。これらから、国内の森林表層土壌における純窒素無機化速度・純硝化速度の空間的変動は、無機化資源となる窒素量が多いと高く、生物的・非生物的な無機態窒素の取り込みが多いと低くなることが示唆された。