| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-404 (Poster presentation)
日本の森林に広く分布する火山灰土壌の二酸化炭素(CO2)放出速度は、温度と概ね指数関数的比例関係にあり、10℃の温度上昇で2倍に増大する可能性が指摘されている。また、土壌の乾燥と湿潤が繰り返される環境(乾燥―湿潤サイクル条件)でのCO2放出が、水分が変化せず一定の環境(水分一定条件)での放出に比べて大きく、火山灰土壌においてその差が50%程度にも及ぶことが分かってきた。本研究では、理化学性の異なる火山灰土壌を対象として、乾燥―湿潤サイクルがCO2放出速度の温度依存性に対してどのように影響するかを調査した。北茨城の落葉広葉樹林で採取した2種類の火山灰土壌(炭素量・リン酸吸収係数ともに、土壌A<土壌B)を、乾燥―湿潤サイクルおよび水分一定の各条件で84日間好気培養した。培養温度は20℃と30℃に設定し、各温度でのCO2放出速度の比 Q10(Q10 = 30℃での放出速度 ÷ 20℃での放出速度)をCO2放出速度の温度依存性の指標として比較した。乾燥―湿潤サイクル条件では、培養期間中に乾燥―湿潤サイクルを3回繰り返し、その平均土壌水分量が水分一定条件の土壌水分量(最大容水量の約40%)と等しくなるように管理した。乾燥―湿潤サイクル条件で培養した土壌のCO2放出速度は、培養温度や土壌の種類にかかわらず、乾燥に伴い大きく減少し、湿潤に伴い大きく増大した。水分一定条件のCO2放出速度は培養に伴い緩やかに減少した。土壌AのQ10は、水分条件の違いに依らず、1.4から1.5程度であった。一方、より典型的な火山灰土壌である土壌BのQ10は、水分一定条件(Q10≒1.5)よりも乾燥―湿潤サイクル条件(Q10≒1.3)で明らかに低かった。以上より、乾燥―湿潤サイクルがCO2放出速度の温度依存性に及ぼす影響は土壌理化学性によって異なり、典型的な火山灰土壌では温度上昇に伴うCO2放出の指数関数的増大が緩和される可能性が示唆された。