| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-406  (Poster presentation)

日本の気候傾度に沿った常緑針葉樹林の炭素収支とその環境制御要因
Carbon budget and its environmental control factors in evergreen coniferous forest along climate gradient in Japan

*斎藤琢(岐阜大・流域研), 安江恒(信州大学・農学系)
*Taku M. SAITOH(RBRC, Gifu Univ.), Koh Yasue(Inst. Agric., Shinshu Univ.)

スギ・ヒノキが優占する常緑針葉樹林は、日本の森林面積の30%程度を占める。このため、この森林生態系における炭素循環の気候変動応答特性とその空間変動を明らかにすることは、日本の地域スケールの炭素シーケストレーションを考える上で、最も重要な研究の一つである。本研究はその一環として、東北から九州までを縦断する異なる気候帯における常緑針葉樹林生態系の炭素循環の気候変動応答特性を生態系モデリングにより明らかにすることを目的としている。本研究では、岐阜県高山市の高山常緑針葉樹林サイトのフラックス観測値(2006-2010)を用いて検証された生態系モデルを利用し、温量指数が異なる全国10地点を対象にモデル計算を実施し、異なる気候帯における生産量への影響が大きい気象因子に関する検討を行った。解析地点は、年輪構造クロノロジー採取地または採取予定地から温量指数に基づき、各解析地点の生態系モデル入力用の気象値は、農研機構1kmメッシュ気象データ(日値)と近隣アメダスの気象値(1時値)をもとに、1990年から2016年までの27年間の各気象値(気温、降水量、日射量、水蒸気圧、大気圧、風速)の1時間値を推定した。これを入力データとして、1990年から2016年までの27年間の炭素収支を推定し、気象要素との相関分析を実施した結果、寒冷地ほど冬から春先の生産量の気温依存性が高い傾向があり、常緑針葉樹林の炭素収支に影響を及ぼす主要な気象要素は気候帯によって異なることが示唆された。


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