| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-410 (Poster presentation)
主に倒木を指す粗大有機物(CWD)は、葉や土壌などの有機物と比較して分解速度が遅く、森林生態系の炭素循環において異なる役割を担っている。CWDの分解にともなう微生物呼吸(RCWD)は分解速度の指標とされ、CWDの乾燥重量や表面積ベースで評価されることが多い。しかしこの両者によって算出されたRCWDの差は未だ不明瞭であり、その差はRCWDをローカルレベルにスケールアップする場合、評価の精度に大きな影響を与える。また、CWDの表面積は大まかな外寸の測定から算出する手法が用いられてきたが、これではCWDの樹皮の凹凸や腐朽にともなう穴などの表面構造は捉えられていない。そこで本研究の目的は3Dスキャナーを用いて表面積をより高精度に算出してRCWDとの間の関係を明らかにし、従来法の表面積、乾燥重量とRCWDの関係と比較することで各手法の妥当性を評価することとした。
調査林からサイズ(小、大)と腐朽度(1〜3)が異なるCWDを採取した(n = 3)。3Dスキャナーを用いてそれらの表面積を測定し、同時に従来法による表面積と乾燥重量も測定した。さらに赤外線ガス分析機を用いてCO2放出速度を測定し、表面積および乾燥重量とRCWDの相関関係を比較した。
表面積は従来法と比較して有意に大きく測定され(p < 0.01)、全体で4〜16%の差が認められた。これらの差において、サイズ間における違いはほとんど認められなかったが、腐朽度においては高いCWDほど差が広がる傾向が観察された。これは腐朽にともなう穴のような表面構造を本手法が詳細に捉えたことが要因であると考えられる。本手法による表面積とRCWDの間には有意な正の相関が認められ(r = 0.59, p < 0.05)、従来法(r = 0.58, p < 0.05)と比較して本手法がわずかに強い相関を示した。また乾燥重量とRCWDの間には有意な相関は認められなかった(r = 0.35, p = 0.26)。したがって、3Dスキャナーを用いた表面積の測定手法は、より高精度なRCWDの測定を行うための妥当な手法であることが示された。