| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-414  (Poster presentation)

アミノ酸の放射性炭素濃度測定法の開発と生物地球化学研究への応用 【B】
Compound-specific radiocarbon analysis of amino acids for biogeochemical research 【B】

*石川尚人, 高野淑識, 小川奈々子, 大河内直彦(海洋研究開発機構)
*Naoto F. Ishikawa, Yoshinori Takano, Nanako O. Ogawa, Naohiko Ohkouchi(JAMSTEC)

 地球上に生きるすべての生命体にとって、アミノ酸はもっとも重要な有機化合物の一つである。一方、放射性炭素の天然存在比(Δ14C)は、生態系の炭素循環を明らかにするための有用なトレーサーとして、近年注目が集まっている。本研究は、アミノ酸の分子レベルΔ14Cを正確に測定し、環境試料の解析へと応用することを目的とした。まず、高速液体クロマトグラフィーによって各アミノ酸を単離し、さらに湿式操作による精製処理を施すことで、従来法を用いた場合の不純物の混入量を、最大で約7割減らせることが分かった。この手法を用いて、海棲大型生物の筋肉コラーゲンに含まれる、8種類のアミノ酸(グリシン、アラニン、グルタミン酸、バリン、メチオニン、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニン)のΔ14Cを、元素分析計-加速器質量分析法により測定した。その結果、ほとんどのアミノ酸は、海水中の溶存無機炭素のΔ14Cや、コラーゲンのΔ14Cと同様の値をとることが分かった。一方、一部の生物に含まれるメチオニンやフェニルアラニンといった必須アミノ酸は、他のアミノ酸よりも低いΔ14Cを示した。これらの結果は、アミノ酸の炭素骨格が、海水中の溶存無機炭素だけでなく、溶存有機炭素や堆積物といった、滞留時間のより長い炭素プールにも起源をもつことを示唆している。


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