| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-418 (Poster presentation)
窒素やリンをはじめとする栄養塩類は作物栽培に不可欠であるが、生産過程ではその多くが環境中へ放出・排出され、富栄養化、酸性化、生態系機能への影響、地球温暖化(一酸化二窒素)、資源の散逸(リン)などをもたらしている。そのため、作物生産においては、近年注目されている地球温暖化の防止とともに、栄養塩の効率的な利用を進めることが重要である。本研究では、次世代食料生産技術の一つであり、栄養塩の効率的な利用が期待される植物工場に着目し、A社植物工場での生産(ハウス・水耕栽培・地熱利用)と、B社温室生産(ハウス・土耕栽培・重油利用)及び露地栽培(圃場・土耕栽培、文献値)における窒素・リン・カーボンフットプリントについて、バジル栽培を事例として比較した。分析対象としたのは、リン・窒素の施肥及びハウス内の加温・植物工場機器利用のためのエネルギー利用による窒素酸化物・二酸化炭素排出である。
A社の水耕栽培では栄養塩を循環利用するため窒素・リンの施肥効率を100%、また加温については地熱エネルギーを利用していることから、機器類使用のための電力の窒素酸化物及び二酸化炭素(CO2)排出量のみを考慮した。B社及び露地の土耕栽培では施肥量の50%がバジルに吸収されないと仮定し、B社については加温のための重油使用を考慮した。
バジル生産重量当たりの各フットプリントについて、B社を基準(100%)として比べると、A社は施肥リン・施肥窒素・エネルギー窒素がそれぞれ1%未満、エネルギーCO2が23%、露地栽培は施肥リンが2%、施肥窒素が8%程度となった。また、仮にA社が重油により加温した場合には、エネルギー窒素は6%、エネルギーCO2は29%になった。
したがって、再生可能エネルギーと組み合わせることで、植物工場は露地栽培及び従来のハウス栽培に比べて生産量当たりの環境負荷を低減できる可能性が示唆された。