| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-419 (Poster presentation)
本研究は、兵庫県西播磨地域を流域圏とする千種川において、複数年にわたる面的一斉調査で得られた河川水試料の溶存イオン濃度、硫酸イオンの硫黄・酸素安定同位体比、および硝酸イオンの窒素・酸素安定同位体比を用いて、流域における硫酸イオンおよび硝酸イオンの起源と動態を解明することを目的とした。調査は、2015年から2017年の毎年8月、および2018年2月に行った。
硫酸イオンは全期間に共通して北部の源流域で濃度が低く、南部の河口域に近いほど濃度が高い空間傾向がみられた。各地点の濃度と同位体比は採水時期に関係なく、ほぼ同じ値を示した。同位体比の結果から、流域の硫酸イオンは主に土壌の硫酸塩由来であること、また河口に最も近い地点の硫酸イオンは海水由来であることが推定された。
一方、硝酸イオンは、8月は源流域よりも中流から下流域で濃度が低い空間傾向を示したのに対し、2月は中流から下流域の同地点の濃度が源流域よりも高い傾向を示した。同位体比の結果から、3つの支川(大日山川、江川川、矢野川)の硝酸イオンは有機質肥料や排水に含まれる窒素の硝化に由来することが推定された。また8月と2月における同位体比と濃度の比較から、8月に生物による硝酸イオンの取り込みや脱窒の寄与が示唆された。さらに、硝酸イオン濃度の空間分布は土地利用のうち施肥地(田、農用地、およびゴルフ場)の面積割合と有意な関係を示したことから、流域内の硝酸イオン濃度分布に対する施肥の影響が示唆された。