| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-424  (Poster presentation)

岡山県真庭市蒜山地域における火入れの現状 ~「山焼き」を受け継ぎ、伝えるには?~
Current situation of traditional prescribed fire in Okayama pref. -how to carry on the tradition and the skill for grassland habitat management-

*片岡博行(重井薬用植物園), 雪江祥貴(津黒いきものふれあい)
*Hiroyuki KATAOKA(Shigei Herb Garden), Yoshitaka Yukie(Tsuguro Satoyama Nature Field)

 岡山県北部に位置する真庭市蒜山地域では、毎春、各集落が管理する半自然草原において「山焼き(火入れ)」が行われているが、近年は山焼きを停止する集落や、継続している集落においても山焼き面積が縮小されるなど、実施面積は減少しつつある。草原の一部には、サクラソウなどの希少な動植物がみられ、保全上も重要な場所となっている。サクラソウ自生地では、地元集落による山焼きが停止されて以降、幾度か外部の団体により保全目的で山焼きが実施されたが、いずれも延焼発生により撤退した。筆者らは、2013年より「山焼き隊」と称するボランティア団体を組織し、山焼き関連作業の手順・安全対策の見直し等を行い、山焼きを実施するとともに、夏期の草刈りによる保全活動を行っている。

 また、サクラソウ自生地に隣接する草原は、これまで地元集落によって山焼きが行なわれてきた、蒜山地域の山焼き草原としては最も広い場所である。2017年の山焼きは天候不順が続いたことを理由に中止となり、2018年についても実施しない、という意向であったが、「山焼き隊」および行政側からの働きかけによって、山焼き隊が主体となり、集落側が指導と補助を行う形で山焼きを再開した。山焼きの実施主体の引継ぎが円滑になされた理由として、「山焼き隊」が小面積ながら独自に山焼きを行っていたこと、また集落が実施する山焼きの補助の活動実績があったことが大きい。

 引継ぎを行う過程においては、従来の実施主体であった地元集落の山焼き従事者の高齢化に加え、暮らしの中での草原の価値がなくなり、草原を維持しなければならないという意欲が低下した結果、山焼きの縮小・停止に繋がっている現状が明らかとなった。長期的に草原の維持・管理を行うには、山焼きの技術や草原利用の知恵の継承が不可欠であり、そのためには、草原資源の利活用を促し、草原の新たな利用者が核となるような仕組み作りが必要である。


日本生態学会