| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-428  (Poster presentation)

亜成体アオウミガメの異なる個体群間における行動シンドロームの比較
Comparison of behavioral syndrome between yaeyama and honshu populations of subadult green sea turtle

*工藤宏美(東京大学, 日本学術振興会), 内田桂(NPO おおいた EC), 亀田和成(NPOウミガメ協議会), 佐藤克文(東京大学)
*Hiromi KUDO(AORI Tokyo Univ., JSPS), Kei Uchida(NPO Oita EC), Kazunari Kameda(Kuroshima St.), Katsufumi Sato(AORI Tokyo Univ.)

人為的な環境変化に対する応答の仕方は性格で異なるため、生息地の急速な変化に絶滅危惧種の性格がどのように応答するかを調べる研究は保護策を講じるために必要である。一般に、性格は環境や状況の変化によらない個体毎の一貫した行動傾向で示される。また、性格が大胆なほど探索性が高いように、個体の行動傾向が複数の行動に現れることを行動シンドロームという。生息地の捕食圧が高いと、大胆さや探索性の性格形質に選択圧がかかり、行動シンドロームを示すと予想される。絶滅危惧種の亜成体アオウミガメは移動範囲に個体差があり、定住性の低い個体の生息海域の捕食圧は可変的であると予想される。しかし、生息海域の違いで、性格や行動シンドロームがどのように異なるのかは明らかでない。そこで本研究では、亜成体アオウミガメを対象に、二つの海域での行動シンドロームの有無を調べた。まず、定住性の低い個体が生息する大分県間越海岸付近での混獲個体を用いて、大胆さと新奇探索性の性格を刺激提示実験で特定した。初めに危険な状況として手網を提示して大胆さを調べ、次に奇異な状況として鏡を提示して個体毎の新奇探索性を調べた。各刺激への反応時間を計測し、個体ごとの一貫性を確認して、性格を特定した。さらに、性格間の関連性を調べ、行動シンドロームの有無を調べた。同様の実験を、定住性が高いと報告される八重山郡黒島付近で混獲・刺し網で捕獲された個体で行い、行動シンドロームの有無を調べた。その結果、大分では、行動シンドロームを示す個体と示さない個体があり、これまでの生息環境の履歴が異なる二つの集団が大分に来遊している可能性が示唆された。一方、黒島の個体は行動シンドロームを示し、生息環境の履歴が同じ集団が生息している可能性が示唆された。これらのことは、定住性の高い個体は行動シンドロームを示し、定住性の低い個体は行動シンドロームを示さない可能性を示している。


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