| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-437 (Poster presentation)
生息地の消失や劣化は、世界各地で生物多様性の脅威となっている。日本では、戦後に天然林と草地の多くが針葉樹人工林へ転換され、現在では森林面積の42%を人工林が占める。また、この人工林の多くは伐期を迎えており、近年では各地で大規模な伐採が行われるなど、管理上の大きな転換期を迎えている。人工林の生物多様性を調べた既往研究は、人工林の伐採(若齢林の創出)や伐採の延期(成熟林の創出)、広葉樹との混交林化などの管理が生物多様性の保全に有効であることを示してきた。これらの研究の多くは特定の地域内で行われてきたが、生物の広域分布を強く規定する気候(各季節の気温や降水量など)が異なる地域では、同様な林齢、広葉樹混交率の人工林であっても、そこに生息する生物群集は大きく異なると考えられる。したがって、人工林の管理を通じて広域的な生物多様性の保全を進めるためには、林齢や広葉樹混交率が生物群集に及ぼす影響とその地域差を明らかにすることが必要である。そこで、北海道全域から選んだ気候の異なる6地域(ニセコ町、名寄市、深川市、紋別市、浦幌町、厚岸町など)において、主要な植栽樹種であるトドマツ・カラマツの人工林(各々約30地点)、天然林(6地点)を選び、各地点に生息する鳥類を繁殖期(5~7月)に2回調査した。具体的には、各調査地に設定した300 mの直線ルート上を歩行し、両側50 mで確認した鳥類種と各種の個体数を記録した(ラインセンサス法)。そして、林齢と広葉樹混交率、繁殖期の平均気温が鳥類群集に及ぼす影響を明らかにした。2019年に調査地の追加を予定しているが、本発表では2018年に得られた鳥類データを一般化線形混合モデル(GLMM)で解析した結果を示す。