| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-444 (Poster presentation)
カキランはラン科の多年草で,北海道から九州の日当たりの良い山野,湿地などに生育する.各地で減少傾向にあり,26の都道府県で絶滅危惧種に,1つの都で絶滅種として取り上げられている.
島根県三瓶山の半自然草原のなかには,毎年春の火入れによってススキ草原が維持されている場所があり,そこではカキランの生育がみられる.一方,本種の分布は草原内で一様ではなく偏りがあることから,今後の保全策を検討する上で,生育環境の違いを把握することは重要と考えられる.
そこで,三瓶山火入れ草原における本種の生育環境を明らかにすることを目的に,植生や光環境などの調査を行った.生育箇所の調査として,本種を含む1m四方の方形区を30箇所設置した(生育区).比較のために生育がみられない箇所を選び,ランダムに同数の方形区を設置した(対照区).各方形区では植生構造の調査として植生高,出現する植物種の高さと植被率を記録し,あわせて土壌硬度と相対光量子密度を測定した.
平均植生高は,生育区および対照区でそれぞれ0.37mと1.06mであった.平均植被率はそれぞれ91.2%と98.3%,平均出現種数は20.9種と14.9種であった.調査地の優占種であるススキの乗算優占度は,生育区で10.6に対し,対照区では88.6と高かった.また,土壌硬度はそれぞれ17.7と8.0,地上0.5mの相対光量子密度は96.0%と19.3%であり,いずれも生育区の方が高い値を示した.生育区で調査したカキランの個体数と環境要因との関係性をみると,植生高が低くなるほど,相対光量子密度が高くなるほど,個体数が多くなる傾向にあった.これらより,火入れ草原の中でのカキランの生育環境としては,植生高が低く明るい場所であることが明らかになった.