| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-452  (Poster presentation)

童謡唱歌に登場する動物相から考える生物多様性の文化的サービス
Cultural services of biodiversity based on animal fauna in children's songs

*片山直樹, 馬場友希(農研機構・農環研)
*Naoki KATAYAMA, Yuki G. Baba(NIAES, NARO)

生物多様性がもたらす文化的サービスの一つが、音楽に対するインスピレーションの提供である。例えば歌詞には、多様な生物種が登場する。その登場頻度や種数を定量化することで、どの生態系・生物種が大きな文化的サービスを提供してきたか、理解するための一助となる。さらに、生物多様性に関するデータの少ない戦前の歌詞は、その時代の生物相を知るための貴重な情報源となるかもしれない。そこで本研究は、戦前の童謡・唱歌に登場する動物相を調べ、(1)どの分類群(昆虫、両生爬虫類、淡水魚類、鳥類、哺乳類)の種数・登場頻度が高いか、(2)各分類群においてどの種の登場頻度が高いか、を明らかにした。国立音楽大学附属図書館が提供する童謡唱歌データベースを用いて、大正期~昭和前期 (1912~1945) の童謡・唱歌等 (約1,200冊) から、各分類群を検索した。検索には科名を用いたが、それ以外の認知度の高い生物名(例えばカエル、キツネ)も加えることで検索漏れを防いだ。各分類群の科数を比較する際には、分類群ごとの検索単語数の差(に由来する登場頻度の差)を考慮するため、個体ベースのレアファクションを用いて科数を推定した。解析の結果、どの分類群でも里山の動物が多く登場することが分かった(例えばホタル、トンボ、カエル、メダカ、スズメ、ウサギ等)。ヒバリやキツネの登場頻度も高く、当時の草地面積の多さを反映していると考えられた。またレアファクションの結果、鳥類および昆虫の科数が多く、当時の自然・風景を歌う際に重要な存在であることがわかった。本研究は、里山の生物多様性が文化的サービスの側面からも重要であることを示す一つの事例と言えるだろう。


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