| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-459 (Poster presentation)
日本を代表する草原の一つである霧ヶ峰草原は,江戸時代以降の採草利用や火入れにより維持されてきた半自然草原である.しかし,1960年代以降の土地利用形態の変化により,草原の森林化が進行し,草原景観の存続が危惧されている.このような半自然草原の減少や植生変化は,草原特有の植物の減少・消失を招くだけでなく,そこを生活の場とする草原性鳥類等への影響が懸念される.その中で霧ヶ峰高原の東端に位置する茅野市柏原地区(約42ha)では,草原景観維持のため,毎年春に火入れが行われている.最近では,霧ヶ峰みらい協議会等による雑木処理や火入れ(2013年の延焼により現在中断)などの草原再生事業が行われている.
霧ヶ峰における草原性鳥類の生態や生息状況に関する研究は,1960年代から1970年代にかけて中村登流らを中心に進められてきた.中村(1963)は八島ヶ原湿原を中心とした草原性鳥類の群集構造解明で,ホオアカ,ノビタキ,コヨシキリの3種が優占種であること,ホオアカとノビタキは全般的にコースに出現したのに対し,コヨシキリは丈高草群に偏在すること,現在は消失したコジュリンの分布は極限していたことを明らかにした.本研究では,中村(1963)とほぼ同一のセンサスルートを調査することで,その当時との違いについて検討した.また,現在も火入れを行なっている柏原地区や八島湿原周辺と同様に草原の管理を停止した強清水にセンサスルートやポイントを設け,草原管理の違いによる草原性鳥類の違いを調査した.その結果,今回もホオアカやノビタキは優占種であったのに,コヨシキリは現在も火入れをしている柏原地区の草原に局在していたことが明らかになった.また,最近行われてきている火入れ事業による草原性鳥類への効果についても調査ルートやポイントを設け調査をしたので,その結果についても報告する.